むかつき日記2000年1月〜2月       スタッフご紹介

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最新の日記


2月29日(火)

 何度カレンダーを見ても、新聞で確認しても、今日が2月末日なのだ。今月は30日が絶対に来ない。てんちょはどうしてもそれが納得できないらしく、お客さんにあたっていた。今日来てくれたお客さんはもう二度とこの店に来ないだろう。いつもの年は2月は28日までだから、実は今年は一日得をしているのに...。てんちょは自分を中心に考え過ぎる。ばかだ。愚鈍だ。暦にむかついてお客さんにあたるようでは、接客マナー最低と言われてもしょうがない。


2月28日(月)

 月末なのである。てんちょは今月も『ふたつあるから一つは売ってもいいものリスト』を拡げてため息をついていた。


2月27日(日)

 てんちょは今日も捜査を続けているのだが、相変わらず有力な情報が得られないようだ。このままこの事件が迷宮入りとなれば、また同じ犯人による七味さん傷害事件が起こるだろうと懸念される。捜査本部内に焦りと緊張の雰囲気が漂う。七味さんはお客さんのジーパンでツメを研いだりしている。どうやら回復しつつあるようだ。

 夜、どう見ても洋服マニアなお客さんがかなりマニアックな古着を買っていった。凄腕美容師をしているということだ。帰り際、七味さんに『ショートよりロングの方が絶対かわいいよ』と言っていた。七味さんがロングにしたら、...うーん、やっぱりヘンだとぼくは思う。

 今日入荷したシャツやブラウスはどれもいい感じで、特にぼくが気に入ったのはバンダナ柄のウェスタンシャツだ。サイズさえ良ければ絶対に買いたいのだが、試着してみるとやっぱり袖が短い。せめてあと2メートルくらいあればなんとかなるのに。...実はいま、通信講座で自分の腕を蛇腹状に収縮させる技術を習得中なのだ。もう少し上達したら普通サイズのシャツを着てみんなを驚かせるつもりだ。


2月25日(金)

 七味さんが夜から復帰した。まだ足が痛そうで、見ているとすこしつらい。精神的な傷も残っているようだ。いまひとつ元気がなく、少し怯えた表情で外を伺うだけで、外には出ない。早く完治して欲しい。

 てんちょは七味さんに怪我を負わせた犯人を捜している。朝から近所の聞き込み捜査をしているが、何の手がかりも目撃者も出てこない。犯行現場は土のある場所、としか分かっていない。七味さんも思い出したくないようで、事件に関しては口を閉ざしたままだ。鑑識は、凶器は『ツメ』もしくは『材木から突き出た釘』、と発表した。

 てんちょは明日も引き続き捜査を行う。接客などのめんどうな仕事はしないらしい。また、店の看板を『七味ちゃん傷害事件特捜本部』と書き替えるそうだ。


2月24日(木)

 abiyo.comが今日からスタートした。もっとたくさんの方に観ていただくために、もっとマメに更新し、さらに面白い内容を企画しなければいけない。ネット担当のとしぽんは、よくやっていると思う。今度は50MBもあるサーバーだから、いままで以上の企画力と技術を駆使したページ作りをてんちょから期待されるだろうから、これからまた大変になるだろう。としぽん、おつかれさん。しかし、ぼくはこの「ネット担当のとしぽん」とは会ったことも話をしたこともない。としぽんとは誰なのだろうか?本当に存在する人物なのだろうか?またひとつ、疑問が生じた。

 『お店は作品である』と某有名セレクトショップの社長さんが業界紙で語っていたのを読んだことがある。最近はお店の内装、外観、商品構成、商材全てに関して同じようなお店が増えて、個性的なお店が少ないためにどこの地方のお客さんも食傷気味なのだそうだ。

 きのう、七味さんがけがをして帰って来た。それからずっとおとなしく寝ている。てんちょは夜眠れなかったようだ。いつもけんかばかりしてるくせに本当は七味さんのことが心配でしょうがないらしい。『もっと素直になりなさい』とてんちょに忠告しよう。...ぼくも七味さんが心配でしょうがなくなり、営業中でありながら天井から降りて七味さんの様子を何度も見に行った。明日はみんな元気でいて欲しい。


2月22日(火)

 今日はネコの日なので仕事が休みだという人が多い。

 閉店後、七味さんがぼくを呼ぶのでどきどきしながら近付いたら、大きなアクビをした。意味がわからず、呆然としているうちに彼女はどこかに行ってしまった。何だったのだろう。また今夜は悩みそうな気がする。『人間は意味を見い出そうとする生き物である』というようなことを誰か偉い人が言っていたのを思い出した。


2月21日(月)

 今日最初のお客様はちょろさんだった。ちょろさんの衝撃的な告白にぼくもてんちょもおやじも、興奮してしまった。


2月19日(土)

 きょうは開店前に七味さんがてんちょの背中をバリバリしていたために少し開店時間が遅れた。どうやら、てんちょが七味さんのとりのささみ入りまぐろを無断で食べたために七味さんが怒ってしまったらしい。営業中もふたりは機嫌が悪く、無愛想に接客していた。私的な感情をお店に持ちこまないで欲しいと思った。

 夜、遠くからマニアックなお客さんが、マニアックな服を買っていった。すてきなお客さんだ。


2月18日(金)

 なぜか今日は結構売れた。2月はどのお店も売れないはずだし、実際に売れてないのに。柏のステモで働いているお客さんも、全然売れないと言っていた。しかし、今日ウチの店は結構売れた。なぜか怖い。売れるのが怖い、ということもなぜか悲しいけど。


2月16日(水)

 きのうは定休日だったのでひさしぶりに他のお店を見に行った。ほとんどのジーンズカジュアル店もセレクトも古着屋さんも『いらっしゃいませ』とお客さんを迎え、お客さんが少しでも商品に興味を示すと『よろしかったら試着してみて下さい』と声をかけ、本格的な接客を開始する。それは基本的な接客方法であり、アパレル小売り業界の常識のようだ。ところが洋品店の接客マニュアルには、『いらっしゃいませ』は必ずしも必要では無い、と書いてある。場合によっては省略してもかまわない、ということだ。お客様に笑顔をみせてはならない、とも書いてある。ちょっとひどい。他のお店を見て初めてウチの店の接客マナーはナッテナイということに気付いた。てんちょは『試着してもいいですか?』と言うお客様に対して『えっ?試着するの!?...ふーん』などと答えたりする。店長みずからそんな接客をしている。これでいいのか?


2月14日(月)

 きょうはバレンタインの日だった。バレンタインセールのために仕込んだチロルチョコは予想通り、たくさん余っている。てんちょがチロルを食べ続けて鼻血を出している姿が目に浮かぶ。『ざまあみろ!』という微かな声がどこからか聞こえた。


2月13日(日)

 きょうは天気もよくお客さんも多かった。そろそろ男の子はショートパンツが欲しくなる時期である。我孫子洋品店は短パン好きの男の子のためのお店でもあるので、これからバンバン入荷したりリメイクしたりするはずだ。ぼくは仕事中いつもナイロンパンツと長靴なので、その反動からなのかプライベートでは短パンにスニーカーがほとんどだ。


2月11日(金)

 りゅうさんがAVビデオのヒト達を連れて来てくれた。そっちの業界の話をしている時のてんちょは、いつもよりも興奮気味だ。スタッフとしてぼくは少し恥ずかしい。

 チョウチョ柄のスカートが完売した。こういう人気のあるものはすぐに追加投入するべきなのだが、製造元の生産が間に合わないようなので、入荷は3月になるそうだ。大量入荷できないようなちいさな店なのでしょうがない。

 てんちょは大切な伝票を自分がなくしたくせに、七味さんのせいにしていた。『おまえがガリガリやって食いちぎって捨てたんだろ!』と言いながら七味さんのしっぽに噛み付いていた。七味さんも負けずに『はぐはぐ』と言いながらてんちょの手足を噛んでいた。


2月10日(木)

 この頃気がついたことがふたつがある。ぼくの手はまだ成長しているということ。それから、ぼくがため息をついたり深呼吸をする度に天井のアルミホイルがゆれるということ。手が今よりも長くなるということは自分だけの問題で済むけれども、アルミホイルがゆれるとお店にいるお客さんが怖がるので、なんとかしなければならない。てんちょに相談しようと思う。

 七味さんのしっぽは約30センチある。


2月7日(月)

 2月だというのに温かい一日だった。七味さんはそのかわいい姿や仕草に似合わず外に出て小さな生き物をいたぶっていた。小さな生き物を相手にしている時の彼女は妙に活き活きとしている。不思議な光景だ。しかし、彼女は間違い無く地獄にいくだろう。そう思うとすこし悲しい。

 てんちょがTシャツのデザインで悩んでいる。アイデアが浮かばないらしい。業界紙によると、今年もひらがなや漢字を使ったデザインがいろんなブランドから出てくるようなのだ。...ウチはウチの路線で戦うしか無いのだから、回りを気にしないようにリラックスしてアイデアを練りなさい。と、てんちょうに言ってみよう。


2月6日(日)

 きょうはAVカントクのりゅうさんがいろいろ買い物をしてくれた。忙しい中をわざわざ来てくれてほんとうに嬉しい。ひさしぶりに見たりゅうさんは仕事がきついのかゲッソリと痩せこけていた。さすが売れっ子のAVカントクだ。

 夜、となりの焼き鳥屋に飲みに来ていたタチの悪い小学生が店を占拠した。いつもならボコしているはずのてんちょが、きょうはおとなしくヤツらの相手をしていた。焼き鳥を何本かもらったからだ。てんちょはいつも飢えているので食べ物に弱い。そして食べ物をくれるヒトはみんないいヒトだと思っているようだ。それにしても、食べ物をもらってから手のひらを返したように小学生も大人と同じく接客するてんちょを見習うべきなのだろうか?


2月4日(金)

 『春夏のトレンドについて意見をのべよ』とてんちょが言うので、とりあえず『将棋』と答えておいた。七味さんは『ファー』と答えていた。


2月1日(火)

 きょうは定休日だったのだが、ぼくは出勤した。お店に来ないとなんだか不安だからだ。暗い店内で、何か仕事を探したが、とくに思いつかなくて、結局いつもの場所でいつものポーズをしていた。それから七味さんがいつも座っている場所にぼくも座ってみた。


1月30日(日)

 月末はいろいろと大変なのだ。てんちょは『ふたつあるから一つは売ってもいいものリスト』を作っていた。鼻の穴とかまゆ毛とかもリストにあったので『相場はいくらですか?』と聞いたら『鼻の穴は結構高くて7000円ぐらいにはなる。まゆげはモノによるけど、80円くらいじゃないかな。』...てんちょは一体どこでその相場を知るのだろうか?『ひーみーつっ』と言うだけで教えてくれない。それにしても毎月毎月家賃のためにふたつあるパーツを売っているのに、てんちょは割と健康そうに見えるのは何故だろう?『若いからね。新しいのがすぐ生えてくるんだ!』と言っていたが、それは医学的に考えても嘘だろう。先月は『ひざ小僧を売った時、足が寒くてどうしようもなかったので、通りかかった北風小僧を買ってしまった』そうだ。...もうどうでもいいや。

 きょうは、ハンガーラックの上で接客をしていた七味さんが、お客さんの背中にいきなり飛び移った。悲鳴をあげたその女性客は、あーびっくりしたー、と明るい声を出していたが、どうみてもその表情は固く、怒りに満ちていた。恐らく、二度と洋品店には来ないだろう。またひとり、顧客を失った。七味さんは反省の欠片も見せず、すし屋の方へ駆けて行った。


1月28日(金)

 もう2000年になってから一ヶ月が経つ。日々のスピードが加速していくように思われる。明日が来るのかどうかの不安さえ感じないほどだ。天井裏の暗闇の中でふと考えてはいけない疑問が頭に浮かんだ。『いったいいつまでこんなことしているのだろう?』やばい...。ぼくは物事を深く考え過ぎる傾向が有る。そういえば幼少の頃『哲学くん』とか『キルケゴール』と呼ばれたことがある。A型だからクヨクヨするんだという友人もいた。むかつく。血液型は関係ないと思うんだ。ああ、七味さんのことだけ考えることにしよっと。


1月27日(木)

 七味さんが『答え』だとしたら、てんちょは『質問』である。また、よしこさんが『鉄』であればてんちょが『水』でやまもとが『空気』、そして七味さんが『サビ』である。


1月24日(月)

 チロルチョコが入荷した。これは売り物では無く販売促進材料。毎年恒例のバレンタインセールでは、買ってくれたお客様に感謝の意味を込めてチロルチョコをサービスする。しかし、2月はいつも売れないから結局余ってしまい、てんちょのごはんとなるのだ。かわいそうに。


1月23日(日)

 きょうの朝は天気がよかったのに、夕方から雨が降り出した。雨が降ると七味さんは寝てばかりいる。きのう入荷したサーマル長袖Tがいい感じだ。ぼくも一着欲しいのだが、やっぱり袖が短い。しょうがない、あきらめよう。


1月22日(土)

 今日は千葉ウォーカーの取材があった。掲載されれば2度目になる。我孫子洋品店はお客さんの口コミに期待しているためにあまり宣伝をしていない。口コミが一番有効な情報伝達方法だと考えているからだ。しかし、お客さんが増えないのは立地のせいじゃなくて口コミによる変なウワサによるものなのかもしれない。『あの店の店長はホモらしいぞ』とか『すっげーボったくりの店だぜ、つりもくれねえし...』とか『愛想の無い店員が万引きした中学生に殴る蹴るなどの暴行を加えていた』『エロビデオ業者が出入りしている』『手の長い妖怪や白くて小さい生き物がスタッフとして働いている』...考えるときりがない。口コミに頼り過ぎてもよくないようだし、今回の取材内容がいい広告になればいいのだが、スタッフの代表としてヒゲ野郎の写真が掲載されるそうなので、お客さんはやっぱり増えないかもしれない。取材してくれたライターのおねえさんはコートを買っていってくれた。仕事もテキパキこなしてたし、買い物も潔くてかっこいいと思った。


1月19日(水)

 このところの天気にはほんとうに参ってしまう。今日も冷たい雨が降ってる。七味さんはてんちょに怒っている。てんちょは『おれのせいじゃないよ』と言っているが、七味さんは『じゃあ、誰のせいなの?』といっててんちょの手に噛み付いている。かわいそうにてんちょの手は傷だらけだ。


1月17日(月)

 むかつくほど雨が降る。

 明日は休みだ。思いきり手足を伸ばしたい。

 昨秋ごろからファッション業界ではユニクロ効果というデフレ現象が話題となっている。つまり、安いカジュアル服しか売れないのだそうだ。そこでユニクロの競合の量販店はさらに安い服を作り、対抗する。消費者にとってはありがたいことだ。『ステモのセール行ってもろくなものがない』とか『ライトオンには見飽きたモノばっかりだった』といってウチで買い物してくれるお客さんに大感謝。


1月16日(日)

 実はこの頃七味さんの夢ばかり見る。ドライブをしたり、手をつないで歩いたり...、夢の中の七味さんは雄弁である。『淋しい時の気持ちとおなかがすいた時の気持ちはよく似てるよね。』という言葉が忘れられない。夢なのに...。


1月15日(土)

 きのう入荷したRazorが完売した。午後ベルボトムパンツやセーターなどが大量に届いたため、試着室のまわりはぐちゃぐちゃになっていた。てんちょは整理するのに急がしそうだった。七味さんは、やっぱり遊んでいた。


1月12日(水)

 雨がふってるので七味さんは外に出ていかない。外に出ない七味さんはいつになくキレイだ。


1月11日(火)

 大手デパートやセレクトショップでセールをやっているためなのか妙にお客さんが少ない。七味さんもなんだか寂しそうだ。ぶちょさんが本業に復帰したために昨日でこの店を去ってしまったからだ。最後の日は仲良くふたりで牛乳プリンを分け合って食べていた。

 よしこさんが風邪気味だった。ぼくがてんちょに「よしこさんに温かい言葉でもかけてあげてください。」っていったら、「鍋焼うどん」と優しく言って、よしこさんのほっぺをなでた。よしこさんが少し驚いた様子をみせたら、こんどは「アツアツのみそ煮込みうどん!」と言い残してバックヤードに入ってしまった。その後よしこさんの目から一気に涙が溢れ出た。かなり感動しているようだった。ぼくには理解できない、大人の世界を感じた。そういえば去年も同じようなことがあった気がする。


1月9日(日)

 七味さんはクリスマスや正月といった行事に全く関心がないようだ。ケーキ、プレゼント、サンタ、ミレニアム、お年玉、雑煮、...七味さんにとってはどうでもいいらしい。それだけならまだいいのかもしれないが、流行とかミラノコレクションとかにも興味が無いようだ。いつも白のファーを着ているし。古着屋のスタッフがそれでいいのだろうか?まっいいか...。悪いニュースも知らなくて済むし...。

 今日、めちゃくちゃかわいいお客さんが来ててんちょにウルトラマンガムをあげたら店長がかなり照れていた。てんちょが照れているところを見たのは、はじめてだ。あのヒゲ野郎が照れるほどだから、ホントにかわいいお客さんなのだ。ヤツは七味さんの事をどう思ってるんだろう。

 先日、七味さんとぶちょさんがチュッチュッしているのを見てしまった。その後、何かに怒りをぶつけたい気持ちでいっぱいになり、近所の材木屋の社長のベンツを蹴飛ばした。すっきりした。なにもかも許したい気持ちになった。みんな、だいすきだあ!...ぼくはやっぱり単純なのだ。


1月6日(木)

 なぜだろう。書けない。新年からスランプの連続だ。


2000年1月2日(日)

 昨年末はバタバタとホントに忙しかった。新年になっても何かと忙しい。『来年こそむかつき日記を毎日更新しよう』と大晦日に誓ったのだが、もうやばい。なぜか指が動かない。キーが打てないのだ。


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