むかつき日記(やまもとくんの日誌より)       スタッフご紹介

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最新の日記帳


12月25日(土)

 七味さんには何も言えなかった。確かにチャンスはいくらでも有った。しかし、どうしても言い出せなかった。『七味さん』と声をかけ、彼女が『なあに?』と振り向いた瞬間、身体がコチコチになり、心臓がドキドキして、おまけに胃がキリキリした。ああ、やまもとはなんて意気地なしなんだ。


12月24日(金)

 きょうはクリスマスイヴというだけあって、カップルのお客様が多かった。


12月22日(水)

 夕方、お客さんが集中したために碌な接客ができなかったと七味さんが嘆いていた。しかしぼくは七味さんが接客をしているところをあまり見たことが無い。お客さんが入って来ても『いらっしゃいませ』も言わず知らんぷりしている。てんちょはそんな七味さんにあまい。彼女に対しては強く叱らない。それはてんちょが優しいからというわけではない。てんちょはただ七味さんに嫌われないために甘くしているのだ。それは優しさとは呼べない。ほんとうに七味さんの将来のことを考えるのであれば、彼女のために厳しく注意するべきではないだろうか?それが真の優しさではないだろうか?やはり、ぼくの口から七味さんに注意するべきだろう、強く、厳しく...。ぼくは嫌われてもいい。彼女のためお店のためになるなら。


12月20日(月)

 部長といそやんが倉庫の片づけを手伝いに来てくれた。映像業のりゅうちゃんもなんでも手伝うなんて言ってくれるし。感動して涙が出てくる。部長さんが『七味さんへ』とくれたヨーグルトをてんちょが黙って食べていた。『それは七味さんの...』とぼくが言いかけたら、『あ、ごめんごめん、そうだった...』と言ったがそのまま食べ続けていた。...この頃のてんちょはボーとしてたり物忘れがひどかったりしてなんだかおかしい。


12月19日(日)

 今日は久々に七味さんが天井裏に来た。なぜだかどきどきして何を話そうかなと考えているうちに閉店時間になってしまった。きっと今夜は眠れないだろう。


12月16日(木)

 この頃いろいろと入荷してきたために忙しい。てんちょはコーデュロイパンツやパーカなどを染めたりしてやっぱり忙しそうでいつもバタバタしてしている。そんな中でも七味さんはハンガーラックに上ったりして遊んでいた

それを見ててんちょが『七味さん、いけません!』と注意したら、『なんだよ?うるせーな』という表情をして振り向いた

後になってすこしは反省したらしく、次の荷物は率先して段ボール箱を開けようとしていた

 商品がたくさんあってもお客様が来なければなんにもならない。七味さんがカリスマになればお客様は増えるのだろうか?


12月12日(日)

 開店前、掃除機をかけているとき、ふと視線を感じて振り返ったら、七味さんが奥の扉の影から不思議そうにこちらを見ていた。掃除が終わって、しばらくすると、七味さんは恐る恐る奥から出て来た。掃除機を何か恐ろしい怪物だと思っているらしい。てんちょとは仲直りしていた。

 午後、ワダサヤが来た。ワダサヤは我孫子に棲息する妖怪だ。若くてかっこいい男の子を次々と骨抜きにするらしい。『やまもとくんも気を付けなさい』とてんちょから注意されているが、ぼくはヤツの正体を知っているから大丈夫だ。


12月11日(土)

 きょうは朝からてんちょと七味さんの間に険悪なムードが漂っていた。原因はてんちょが楽しみにしておいたプリンを七味さんが食べてしまったからだ。七味さんはしらばっくれていたが鼻の回りにシロップがついていたのでバレバレだったようだ。

 この頃女性客が少ない。レディス商品がなかなか売れないのだ。他のお店はどうなのだろうか?


12月10日(金)

 店の前にタンやツバをはいていくオヤジにもむかつくが、チャリからゴミを投げ捨てていくバカ高校生にもホントにむかつく。今日はたまたま外で爪を研いでいたてんちょがマクドナルドのポテトの箱を捨てたバカ男子高校生をボコボコにした。てんちょは『てめえ、ウチの店になんのウラミがあるんだ?』と低く冷静な声で言ったが高校生は口などきける状態ではなかった。

 夜、やっとカンペールが売れた。いままで残っていたのが不思議だったのだが、やはりわかるヒトにはわかるのだ。


12月9日(木)

 色白。猫背。身が軽い。爪が長い。キュート。逃げ足が速い。食べるのも速い。ヒトの食べているものを欲しがる。自己中心。エゴイストの座布団がお気に入り。ヒモが好き。昼間、目玉を縦にしている。チーズが好き。高校生集団が怖い。掃除機も怖い。身体が柔らかい。猫舌。桃鼻。ジーパンで爪を研ぐ。まゆげ長い。アクセサリーが嫌い。ミカンも嫌い。ときどき舌をしまい忘れる。足で頭を掻く。昆虫類をいたぶるのが好き。

 本日の売上は一年ぶりに¥0でした。ガビーン!


12月8日(水)

 きょうはジョンレノンの命日だそうで、てんちょは一日中ジョンレノンの曲をかけていた。


12月6日(月)

 クリスマスが近い。シングルにとっては1年で一番寂しい季節だ。ああ、彼女が欲しい。…一瞬、七味さんの顔が浮かんだ。

 明日は今年最後のお休みとなる。みんなゆっくり休んで欲しい。


12月5日(日)

 よく来てくれる高山さんがダッフルを買ってくれたが、残念ながら『古着を買ってハワイ』キャンペーンは既に締め切りとなっていた。申し訳ないが高山さんにはシドニーをめざしてもらうことになる。

 夕方、七味さんはおつかいに出たまま、なかなか戻らなかった。心配したてんちょが入り口で鈴を鳴らしたらすごい勢いで帰って来た。やはりてんちょはスタッフのことをよく理解している。さすがだと思った。

 ぼくはこの頃、この店番日記を書くのがつらい。暗い話や愚痴を書きそうでいやなのだ。決して日記をサボっているワケじゃ無い。


12月2日

 冷たい雨が降っている。


12月1日

 気持ちを入れ替えても、お客さんの数は増えない。業界紙に目を通してわかるのは、今売れているのは一部の有名セレクトショップとユニクロぐらいなのだそうだ。ほとんどの百貨店の売上も前年比減となっている。国内消費動向は全く良くならない。もう無能な政府の経済対策に期待するのは無駄だろう。これから年末にかけて多くの会社経営者が死んだり犯罪を犯したりすることになり、ほんとは同情するだけではすまされない社会問題だけれども、きっとみんなちょっと同情するだけで済まされてしまうのだろう。

 売れないとこんなことばかり考える。てんちょは家賃のために腎臓を売るそうだ。


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