むかつき日記 2000年3月-6月     スタッフご紹介

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最新の日記


6月30日(金)

 月末だというのに、てんちょは妙に余裕を見せている。『ふたつあるから売ってもいいものリスト』(1月30日付けの日記参照)も開かないし、こそこそ店の外をうかがうこともしない。『今月は余裕だな!』と言って肩をポンと叩いてみたら、本気で死ぬほど殴られた。

 夕方、となりのアイツが来た。『きょうあの、ビッグAの前で、ほら、ここのおねえちゃんいるじゃん。ほら、昼間いるおねえちゃん。』『石川さんですか?』『ああ、そうそう、いや、名前は知らねえけど、あのおねえちゃんがビッグAの前でさ、なんか男の車に乗って、どっか行くとこ見ちゃったよ、彼氏だかなんだかしらねえけどさ。』...かなり興奮気味で、鼻の穴をピクピクさせていた。


6月29日(木)

 入り口のいつものところで気持ち良さそうに寝ていたら『しちみちゃーん』と連呼しながらいつものおばさんがやってきた。近付くにしたがい、声がかん高くなってくる。そして、いつものように七味さんのからだ中を撫で回す。さわられている七味さんは『うざいなあ、やめろよー』と言いながら下に降りて奥に行ってしまった。『あらあ、起きちゃったの?しちみちゃん』おめえが起こしたんだよ!『かわいいわねえ、しちみちゃんは』とおばさんは誰に言うでもなく言い残し、『かわいいわねえ』と繰り返しながら後ろ向きに去って行った。遠ざかるにしたがい、声が低く聞こえた。...ドップラー効果。七味さんはおばさんの声が消えると、奥からとことこ出てきた。

 今日はAVカントクのりゅうさんの誕生日だった。


6月28(水)

 雨のために、お客様が少なかったので、てんちょは石川のアゴを拳でグリグリやっていじめていた。『なにすんだよー。やめろよー!』と石川は怒っていた。


6月26日(月)

 夕方、てんちょと石川が探検隊ごっこをしながら虫退治をしていた。『石川隊員!頼むぞ!』『はっ、隊長!』石川は赤いヘルメットを被り、捕虫網を振り回していた。てんちょはショーパンにサファリジャケットを合わせてスヌーピーの水筒を斜め掛けしていた。帰宅途中のおじさんたちがジロジロと見て行く。よほど恥ずかしかったのか、七味さんはふたりから離れたところで背中を向けて小石を転がして遊ぶふりをしていた。お客さんのアンビルさんは羨ましそうに探検隊ごっこを見ていた。石川は赤いヘルメットがほんとによく似合う。

 明日は石川がひとりでアメリカ仕入れに行く。はじめてのバイヤーとしての仕事なのである。かわいいものを仕入れてくれることを期待している。

 きのうは徹夜で政治を勉強して朝一番で選挙に行こうと思っていたのだが、直前になってもやはりしぼりきれず、信頼して支持できる政党も候補者もいないことに改めて気付いた。現行の選挙制度の下で票を投じた人は一体なにを基準に政党や政治家を選んだのだろうか?どんな媒体からどういう情報を得たのだろうか?支持する政党の全ての政策に納得しているのだろうか?...税金払ってンだから投票しなくちゃ損だとも思われたが、無理にどこかの政党に投票しても意味がない。...投票率が低かったのは、政治への無関心からでは決してない。

 てんちょは何も考えず大好きな福沢諭吉に投票したそうだ。


6月24日(土)

 この頃七味さんを見て『大きくなったね』とか『太ったなあ』なんていう人がいる。何故かむかつくのである。『白は膨張色だから、大きく見えるんだよ』という人がいた。ぼくは、その人の説を信じることにした。

 明日は衆議院選挙なのである。森さんみたいに右翼のヤクザみたいのが総理大臣のままでもいやだけれども、お坊っちゃん育ちの鳩山さんもなんだか頼り無い。『経済回復』を公約としている自民公明なのだが、これまで与党として巨額の税金を使って『経済政策』をしてきたのに全く『経済回復』してないのだから、こいつらにはもう無理だろう。野党のなかで信頼できる政党も政治家もいないし、...とりあえず政権交代劇をテレビで楽しむひとが多いはずだ。インターネットで選挙や選挙活動ができれば良いのに...。


6月18日(日)

 石川が休んだので忙しい。昼間来たカップルが七味主義のTシャツをペアで作るそうだ。全自動も連番で欲しいらしい。すごく仲が良かったので、すこしむかついた。男の子が200円の灰皿を300円で買った。


6月16日(金)

 閉店後、売り上げ金を数えていたら、不思議なことに気付いた。万券の福沢諭吉がピアスをしているのである。左耳たぶに6Gはあると思われるボディピがぶらさがっている。ニセ札ではないかとてんちょに見せたら、急に険しい表情になり『やまもと、このことは誰にも言うな!大変なことになるからな。』と言ってさっとポケットに仕舞った。誰にも言うなと言われると言いたくなる。てんちょはホームページを読まないので、この日記には書いておこう。『大変なこと』とは何か?期待しつつ...。


6月13日(火)

 雨が続くと七味さんは妙にキレイなのだ。今日はお客さんも4人しか来なかったし、お店の床も濡れずに済むってもんだ。ははは。夜は雨も強くなり、店の前を通る人もいない。てんちょは自棄になっているのか、外で水遊びをしていた。石川は雨でシャンプーしていた。


6月10日(土)

 夜、数人の迷彩服姿の男たちが店に入ってきた。リーダーらしき男が僕の足にしがみつき、『ドノバン、助けに来たぞ!』と声をひそめて言った。ぼくにはもちろん訳が分らなかった。『はっ?ドノバン?』『ああ、ドノバン、早く降りてこい!助けにきたのだ。』『意味がわからないよ。誰を助けるって?』その時、店の外のJeepのクラクションが鳴った。男は舌打ちをして、『また来るからな、ドノバン。U-46のゲートを開け!いいな!』と言い残し、迷彩服の男たちを率いて去って行った。...まただ。先月も同じようなことがあった。その時は、ぼくは『やまもと』と実名で呼ばれた。今度はドノバン。ドノバンとは何なのだろう。ドノバンを助けるとはどういう事なのだろう。U-46のゲートとは何なのだろう。

 閉店後、てんちょに聞いてみた。『ドノバンって誰ですか?』...てんちょは一瞬ハッと瞠目し、険しい表情になった。そして無言のまま2階の事務所に上がってしまった。


6月7日(水)

 暑いからだろう。七味さんが店内の床にペッタリと寝転んでいた。お客さんが踏んでしまうんじゃないかと心配だったが、優しいお客さんばかりなのでよかった。

 夜、トッツィーがチェックシャツと靴下を買った。


6月4日(日)

 『七味ちゃーん!』と近所のおばさんが誘いに来ると、七味さんは仕事中にもかかわらず、遊びに出て行った。この頃はこのおばさんがウザイらしく、おばさんの声を聞くと店の奥に隠れる。おばさんは『七味ちゃーん、あら、どこいっちゃったのかしら。へんねえ、今までいたのに...』といいながら店のまえでしばらく待つ。おばさんが諦めて立ち去ると、七味さんは奥から出てきてお気に入りの場所に戻る。...こんなことが1日最低3回は繰り返される。


6月3日(土)

 今日はワンピースが80着も届いた。一着づつ状態や柄をチェックしていくのは結構大変な作業なのだ。...しかし、すごい古着に出会ったりするとドキドキして、ああこの仕事は最高だななんて思ったりする。チェックのワンピが新鮮でかわいく思えた。


6月1日(木)

 むかつく。また万引きがあったのだ。ボディピがやられた。しかし、てんちょが作った防犯カメラは犯人を鮮明に写し出していた。


5月31日(水)

 大規模小売り店舗立地法が明日から施行される。大店舗法の廃止で、小さな店を保護する目的の法律はなくなり、今後もますます大型店に有利になるのである。

 『不利になればなるほど、やる気が出てくる』とてんちょは頼もしいことを言う。さすがだと思った。しかし、『大型店万引きラリー』などというワケの分らない企画も考えている。


5月30日(火)

 弱肉強食。資本力のある商社系の大型店は貧乏な小売り店を食う。

 七味さんを襲った犯人がわかった。茶と白黒だ。どっちもカラダが大きく、いかにも腕力がありそうなのだ。白黒はよく七味さんの後をつけている。ストーカー行為も甚だしい。警察に期待しても無駄なので、デューク東郷を刺客として雇うことになった。


5月29日(月)

 きょうは湿度も低く爽やかに晴れた。


5月28日(日)

 蒸し暑い一日だった。日曜日の洋品店前は人通りも少なくて平和で良い。大きな車も通らないので七味さんも安心してスズメ狩りを楽しんでいる。

 実を言うとぼくは人ごみが苦手なのだ。電車に乗るのもつらい。原宿代官山高円寺の店を偵察して来い、とてんちょはいうけれど、ぼくはあんなところ行きたくない。人間がいっぱいのいるところはどうしても吐き気がしてくる。

 予定の古着の入荷が遅れている。『家賃どうしようかなあ』『電気代はばっくれようかなあ』などと、てんちょはすっかり月末モードにはいっている。いしかわが復帰したので男子高校生のお客さんが増えてきた。

 AVカントクのりゅうさんがいるところにH写真家の安藤さんが来た。かわいい奥さんもいっしょだったのでHな会話はなかったようだ。


5月24日(水)

 空からクラッシュドアイスが降ってきたのだ。外にいた七味さんは『ギャー』と叫びながら中に飛び込んできた。氷はしばらくガラガラと降り続いた。七味さんは机の下に潜り込んで震えていた。窓から外を見たら真っ白で何も見えない。...このまま世界が地響きとともに沈むのではないかとさえ思われた。同時に金融機関のオンラインシステムが破壊されれば良いなと、ちょっとだけ考えた。

 『家のガラスが割れたので今日は休む』と後輩スタッフの石川から電話が入った。石川がいないと男子高校生が買い物をしないで帰ってしまうので売上が厳しくなる。店にとっては大きな痛手なのだ。きょうは接客態度が悪いてんちょがひとりで接客をしたために全然売れない。


5月23日(火)

 我孫子にユニクロができる、という近所の不動産業者からの情報が入った。『商品構成も客層も違うし、あっちは大量生産のベーシックカジュアルが主力でこっちは一点物や手作りが売りなんだ。べつにユニクロなんか怖くないね。いや、むしろ歓迎だよ。ベーシックカジュアルが市場に溢れれば、一点物がより新鮮に思えてくるだろうし...』と、てんちょは余裕さえ見せているのである。しかし、そう言いながらも『ユニクロで一万円以上万引きしたお客様にはもれなくハワイ旅行プレゼント!』というキャンペーンの計画も立てているのだ。


5月18日(木)

 夜、上下NANIジャージのヤンキーの群れが来た。うちはそういう店ではないのにやつらは店内を物色していた。...ボスらしきヤンキーが僕の足にしがみつき、『やまもと!助けに来たゾ』と言った。助ける?..ぼくを助ける?『どういう意味だ?』『はやく降りてこい!』『降りてこいって、...ぼくは仕事中だし意味がわからないし...』その時、店の外からTWのクラクションが鳴るのが聞こえた。...するとボスは急に慌てたように『やまもと、また来るからな』と言い残し、群れを率いて去って行った。...ぼくは今起こった出来事の細部をできる限り思い返し、ヤンキーの群れと自分との関係について考えてみた。が、どうしてもぼくとやつらは線で繋がらないのだ。何故やつらはぼくを『助け』に来たのだろうか?ぼくを何から『助け』ようとしたのだろう?ぼくの知らないところで何かが進行しているのだろうか?疑問だらけなのだ。


5月17日(水)

 てんちょの風邪が大分良くなってきた。しかし、このところの悪天候のせいかお客さんは増えないのだ。


5月13日(土)

 雨。...容赦なく...


5月12日(金)

 てんちょの風邪が長引いている。ときどきせきをしたりして、とてもつらそうだ。背中のリセットボタンを押しても、再起動しない。足下がふらふらで七味さんを踏んだ。七味さんは『ぎゃっ』っと叫んで逃げた。


5月7日(日)

 ずいぶん長い間日記をさぼってしまった。この日記を楽しみにしている方に申し訳なく思う。


4月25日(火)

 ギャルオという言葉でくくられてしまう人たちが巷にいるらしい。ぼくにはその『ギャルオ』の定義がわからない。メンズエッグという雑誌を読む男とか、キムタクという歌手の格好をまねする人とか、いろんな説があるみたいだけど...

 夕方来たお客さんはたったひとつの言葉だけでコミュニケーションを成り立たせる、見事な会話テクニックを持っていた。

てんちょ『Tシャツが1900円で、3Pソックスが1000円なので7800円いただきます。』

お客『ええ!まじっスか?』

てんちょ『失礼しました。2900円になります。...はいっ、いちまんえん、ちょうど頂きます。』

お客『まじっスか!』

てんちょ『おつり要るんですか?』

お客『ええっ!まじっスか!?』

てんちょ『しょうがない。それじゃ、28アンドー、4テレタビのお返しです。』

お客『まじっスか!』

延々とこんな会話が続くのだ。

てんちょ『ありがとうございました!またお願いします』

お客『まじっスか!』


4月21日(金)

 今日も冷たい雨なのである。夕方、何者かが店に侵入し、商品を汚した。犯人が足跡を残したため、すぐに鑑識による分析が行なわれた。その特徴のある足跡はどこかで見たことがあるような気がする。七味さんはその足跡を怪訝な表情で見ていた


4月20日(木)

 FLロビンソンのTシャツが入荷した。色も形もとてもいい。いままでのTシャツは少し丈が長かったのだが今度のはちょうど良い。

 きょうはなんだか機嫌がよかった。鼻と耳が桃色だ手は白いけど、手のひらはピンクで少しよごれている

 予定されている古着の入荷が遅れているので、てんちょは機嫌が悪い。


4月16(日)

 ドタドタと逃げるように帰って来た。


4月15日(土)

 ンニャニャッ。と言いながらてんちょのジーパンを駆け上る。短パンの時のてんちょは、ブロックが速い。『ン』の音で、さっととんぼ返りしてかわす。

 わがままなお客さんのうこんのかっちゃんは、てんちょにメットを預けたまま帰ってこない。七味さんはそのメットを回して遊んでいる。

 雨が降ると元気だし、ずっとお店にいるからなんだか安心だ。


4月13日(木)

 今日は暑いくらいの陽気になった。そろそろ虫が大発生する季節だ。我孫子は虫が多い。発生源となる流れない水たまりが多いからだ。我孫子市と水道局が何も考えずに下水への移行工事をしたためである。てんちょは、去年の市議会議員選挙の時、『市民の生の声を市政に反映させます』というのがキャッチフレーズのKM党のオバサン議員に直に虫の対策をお願いした。しかし、やっぱり無駄であった。...今年もまた防虫対策に悩まされることになった。

 ファミマのナオシくんが夏物をまとめ買いしていったため、ふとっぱら大賞の第一候補に躍り出た。


4月12日(水)

 てんちょが売れそうもない雑貨をたくさん仕入れた。仕入れ資金にそんな余裕があるわけでもないのに、...ばかだ。愚鈍だ。さるだ。


4月10日(月)

 夕方、ちょろさんがグリーンの快速Tを買いに来た。就職活動で忙しいらしく、スーツ姿であった。ちょろさんは何を着てもかわいいので何を薦めていいか困ってしまうとてんちょが言っていたが、ぼくも心からそう思う。

 夜、コダマ姉が真っ赤な特急Tを買って行った。ひとめぼれのようだった。『新幹線』も作って欲しいと言っていた。リリーの散歩係りのコダマ妹はオレンジのナイロンパーカを買ってくれた。

 七味さんは雨の中、閉店真際に戻って来た。店の床にペタペタ足跡をつけて...。


4月9日(日)

 3時頃までお客さんは誰も来なかった。天気もいいし、みんな花見でうかれているのだろう。すこしうらやましい。


4月8日(土)

 きょうは天気もよく暖かく、絶好のお花見日和になった。ようやく春らしくなったような気がする。陽気のせいなのか、月末でもないのに、てんちょはワケの分らないことを言っていた。『毎日夜明け前に白い鬼が出る。その白い鬼が枕元からツメを立ててオレの頭を小突くんだ。やめてくれよ!って叫んでも絶対やめない。食料を差し出すまで無言でオレの頭を小突き続けるんだ。怖いだろ?』みんなフーンというだけでマトモに相手をしていなかった。

 夕方、AV監督のりゅうさんが買い物に来た。AV監督のりゅうさんが2週連続で買い物するなんてめったにないことだ。演劇をやってる飯田君と何かHな話をしていた。

 夜はひとりのお客さんも来なかった。石川部長は鼻水を垂らしていたので早めに帰った。


4月7日(金)

 一週間も日記をサボってしまった。石川部長のジャンボ学習帳に人気を奪われまいかと心配になってくる。この一週間、これといった大きな事件もなく(AV監督のりゅうさんと牛久のちょろさんが久々に買い物に来たくらいだ)ストイックな日々が続いた。七味さんは相変わらず仕事もせずグウタラしている。


4月1日(土)

 ぽっぽが花柄、あさけんが青と黒のストライプのシャツを買ってくれた。ふたりともカッコイイし、何を着ても似合うので、何を薦めていいか困ってしまうとてんちょが言っていたが、ぼくも心からそう思う。ぽっぽは『洋品店以外では、服は買わない』とてんちょに言っていた。てんちょは涙ぐんでいた。


3月31日(金)

 きょうもてんちょは変装して裏口から出て行った。風が冷たくお客さんも少なかった。てんちょが恐れているような人たちも現れなかった。七味さんは一日中、お店と近所のすし屋の間を行ったり来たりしている。石川部長は『あがが、うがが』とか言いながらファッション専門誌から情報収集をしていた。よしこさんは彼方遠くを見て、ボーとしていた。ふと、この店のスタッフのみなさんが遠い存在に思えた。

 夜になり、てんちょは泥だらけになって帰って来た。『どこで、何してたんですか?』と聞いても『いやあ、図書館でデザインと経営学の勉強をしてたんだよ』などと誰にでもわかるような嘘をついていた。


3月30日(木)

 『風邪薬を大量に飲まされている気がする』...月末のてんちょは言動が異常だ。『夜、鬼が出るんだよ。』などとワケのわからないことを言ったり、電話がなる度にビクッとして2階に駆上がり、ふとんを被っていたりしている。夕方、店の近くに黒塗りの高級車が停まると、『金融業者か不動産業者が来たら、散歩に出たといってくれ』と言い残して裏口からこそこそ出て行った。高級車の人は近所のすし屋の客だった。...てんちょは夜まで帰ってこなかった。


3月28日(火)

 今日も雨だ。

 ぶた。メンズシャツ。カーディガン。サンダル。柄スパッツ。NO.8。ヴァニラ。花柄ウェスタンシャツ。チャイナジャケット。チェックシャツ。靴下。バッジ。ブレスレット。

 以上、今日売れたもの。


3月27日(月)

 午後一番で服飾系の専門学校に通う方がてんちょのプリントTシャツをかなり気に入ってくれて、2着も買っていった。夕方、別の服飾系の学校の方がやはりTシャツを買ってくれた。夜、ときどき来るお客さんが『昼間、原宿行って、帰りに柏も見て来たけど良いものが何にもなくて結局ここに来た。』と言ってジャケットやTシャツを買って行った。なんて素敵なお客様達。...今日のてんちょは上機嫌で、ごろごろのどを鳴らしたり、背中を地面にこすりつけたりして、その気分を満喫していた。


3月26日(日)

 夜来たとてもかわいいお客さんが、『ホームページに出てるDJのトシさんて、どういうヒトですか?』とてんちょに聞いていた。てんちょは『うーん、なんていうか、カレーパンとカレーうどんがあったらカレーうどんを選ぶようなヤツだね...』と答えたら、かわいいお客さんは『あー、そうなんだー!』と納得していた。ぼくにはこの辺のセンスが理解できない。カレーうどんを選ぶということだけで、どういうヒトなのかを判断できるのだろうか?...ふたりの会話は世間一般のごく常識的なものなのだろうか?ふと自分が社会から取り残されているような気分になってしまった。


3月24日(金)

 冷たい雨が降っている。春はほんとうに来るのだろうか?

 てんちょは昨日のガクくんの質問の答えを今日も考えていた。


3月23日(木)

 きょうも寒い。春はほんとうに来るのだろうか?

 『お金よりも大事なモノがあるんですよ!』と、古くからのお客さんのガクくんが言った。『ええっ!ホントかい?』てんちょは信じられないという表情をしていた。『ホントですよ。あるんですよ。』『それはひょっとして目に見えないものかい?』『はい、見えないですね』『わかったよ。空気だろ?そうだな、空気がなければ息ができないしタイヤに入れる物がないし...』『物質ではありません』ガクくんは少し苛立っていたようだ。


3月20日(月)

 きょうは風が強かった。お店のドアが吹き飛ばされるかと思ったくらいだ。

 明日は休みになるので、ぼくは澁谷の方まで行ってみようと思う。この頃、お客さんも、『何を着たいのかわからない』と言う。ぼくもお客さんが何を求めているのかがわからない。いま何が新鮮でかっこいいのか?雑誌やテレビを観るより街を歩くことにより最大のヒントを得るような気がする。


3月18日(土)

 世間は今日から3連休らしい。アロエさんがスカートを買ってくれた。下北沢に住んでいる方がなけなしのお金を使って買い物をしてくれるということにいろんな意味で感動する。

 てんちょが染めたタイダイのスウェットが売れている。他のお店でもやっているネタだけれど、てんちょのが一番だとぼくは信じている。


3月16日(木)

 今日は朝から雨が降っていた。一雨毎に春が来る、ということなのでしょうがない。雨の日にはやっぱりお客さんが少ない。立地の悪さを思い知る。

 てんちょが隠れて弁当を食べていた。『何でこそこそ食べてるの?』とよしこさんが聞いたら、『いや、べつに...』と答えていたが、どう見ても何かを警戒していたのは明らかだ。...半分ほど食べたところで佐川急便が来たので、てんちょは弁当を残して佐川のヒトと話し込んでいた。その間、僅か3分ほどだったと思う。てんちょの弁当が何者かに食べられてしまったのだ。むざんに食い荒らされた弁当容器を持つてんちょの片手は、怒りのため小刻みに震えていた。どうやら後の楽しみに残しておいた鳥のからあげと焼き鮭だけが狙われ、ごはんと梅干しとおしんこには手を付けていなかったようだ。そのため、どうせお客さんは来ないだろうということでお店を閉め、犯人さがしの臨時スタッフ会議がはじまった。『皆さんを疑うのはとてもつらいのですが、皆さんの中にぼくの弁当を無断で食べたヒトがいます。いいですか、みなさん、ぼくは怒っていない。...ただ、正直に、食べたなら食べたと言って下さい。決して叱ったりしません。』てんちょは妙に優しい口調でそう言いながら七味さんをちらりと視た。ぼくとよしこさんも彼女の方を見た。七味さんは右手でひっきりなしに、耳から目にかけて擦り続けていた。...てんちょはきっと七味さんを疑っている。...七味さんは今度は左足で左後頭部を掻いている。『わかった。そうだね、なかなか言えないよね。こういうことは。わかりました...。全員目を閉じて下さい。...いいですか?...ぼくは、全然怒っちゃいません。給料少ないし、お腹空いてたんだな、しょうがないなって思って許しちゃいます。ですから、正直になってください。...ぼくのお弁当、...鳥の空揚げと焼き鮭、食べてしまったのは、誰かな?』沈黙が続いた。やっぱりてんちょは七味さんを疑ってるんだ。すごく悲しい...。その時『ぼくですっ!ぼくが食べました。すいませんでした!』ぼくの口から何故か突然そんな台詞が飛び出てしまった。『そうか、やまもと、...おまえだったのか!』『はい、仰せの通りでごじゃります。(なぜかアロエ語をつかってしまった)ぼくが食べました』...目を開けるとぼくはすぐに七味さんの姿をさがした。七味さんはストーブの前で目を閉じたままだった。『ちょっと、こっちに来い』とてんちょに言われて裏に行ったら、150発ほど殴られたり蹴られたりした。許すと言っておきながら、やっぱりやりやがった。身体の痛みを堪えて店に戻ると、七味さんはまだストーブの前で目を閉じていた。というよりスーピーと寝息をたてていた。


3月15日(水)

 いやいやいや、まいったね。一緒に来たよ。あーあ、まいった。AさんとEちゃん。仲良いよねー。春だねー。あーあ...

 確定申告書をギリギリで提出したてんちょは、いつになくスッキリとした表情だった。税務署で、身体のパーツを売って得たお金は雑収入として計上するべきかどうかという質問をしたら、『当然でしょ!』と素っ気なく言われ、何故かむかついたそうだ。


3月12日(日)

 きのう入荷したものが試着室を埋めている。後輩の石川が状態チェックとアイロン作業を担当している。石川は七味さんの後に入店した新人スタッフで、今年、高校の服飾科を卒業した。縫製のテクニックを持っているのでいきなりリメイク部長として雇うこととなった。技術があって部長というポストなのに時給は2円なのだ、可哀相に...。


3月11日(土)

 今日、七味さんがおなかの手術を受けた。傷痕が痛々しい。

 あさけんぽっぽが買い物に来た。あさけんは誕生日だということで10%割り引きしてやった。やっぱりてんちょはふとっぱらだ。これで前例を作ってしまったことになる。つまり『我孫子洋品店で誕生日に買い物をすると1割ほど安くしてもらえる』ということになってしまった。しかし、10%の割り引きは小さいお店では非常に厳しいものがあるので、やまもとの日記を読んでいるヒトだけの特典としたい。


3月9日(木)

 てんちょの熱もようやく平熱(冬期は15℃だそうだ)に戻り、やっと元気な洋品店になった。休み中は七味さんが看病してあげたそうだ。想像できないけど...。


3月4日(土)

 雨が降っている。お客さんは少ない。七味さんは外に出ない。...


3月1日(水)

 夜、となりのオヤジが来た。『おっ、きょうは誰もいないな。...さみいな、きょうは。あのおねえちゃんはいないのかい?...おお、さみいな。いずみちゃん、このごろ見ねえなあ。ああ、さみいな。...』とひとりで喋って出て行った。


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